すみません、今回はホルンじゃありません。
別にネタ切れではないのです。どみなんてぃっしも(広義)であることには変わりないのでご容赦を。
今回は、ベートーヴェンのオーボエ3重奏第1楽章提示部の第2主題終わり付近から、なんともベートーヴェンらしいところを持ってきました。
この曲は作品番号だけ見ると中期の作品に見えます(※Op.87 ちなみに皇帝がOp.73、交響曲第七番がOp.92)が、実際は未だ交響曲も書いていない20代に作曲された曲であり、明朗快活な曲調で、毒は少ない印象です。
特に第2主題は音域を広く使い、伸びやかで倚音を効果的に用いたいかにもオーボエが映えそうな旋律で、個人的に好きな場面の一つです。
で、その中でいわゆる一般的なベートーヴェン像に近い部分が出てくるのがこの箇所。
主題提示部の最後になって、なんと結論を3回も言い出すのですよ。しつこいです。しかも3回目は和声を変えてきちんと強調する徹底ぶり。
手元にある、『旋律法入門』(熊田為宏 著)に旋律の反復に関するこんな記述があるので以下に引用します。
ところで、反復に関する心理学的な考察によれば、提示ー確保ー干渉の3つの段階があるという。すなわち、1回だけでは不安定なので、確保確認の意味で2回目が要求される。そこで満たされるから、3回目は抵抗を感じる。これが干渉である。旋律構造をみると、まさにそのとおりの現象が多い。
『旋律法入門』熊田為宏 著(春秋社)
ベートーヴェンというのは、このいわゆる”3回反復”というのを多用する作曲家であるらしく、これがいわゆるしつこくて押し付けがましいというか、よく言えば矜持があるというか、ともかくベートーヴェンの音楽の性格を特徴づけている要素の一つではあるように思います。
このしつこさと劇的な構成とが組み合わされば完成(?)なのですが、この曲ではまだその段階には至ってないものの、やはりその片鱗は見えるということで、何とも興味深いと感じております。
さて、和音も見ていきましょうか。
ここはこんな感じかと思います。
はい来ました。みんな(古典派)大好き増6の和音です。今回はその中でイタリアの6(○↓Ⅴ27=It+6)と呼ばれる和音が登場しています。
増6の和音というのは、第5音(この場面はG-durなので、Dの音)へ向けた強いエネルギーを持った和音で、大抵はVかI2に進行します。
上の楽譜でもわかるように、第5音に行きたくてたまらない音符君が2人いるのがこの増6の和音の特徴です。(Cis→D、Es→D ※3段目はinF)
このイタリアの6を2回続け、3回目もそれで来るのかと思いきや、3回目は同じドッペルドミナントの仲間ではあるが少し異なる○V91を用いて変化を加えるとともに、B→Hの進行を強く意識させることで緊張感をさらに高め、結果この3回目の念押しを強調させています。保留している2ndのGの音もB→Hの進行の強度を高めているようにとれます。いや~凄いですね。一家総出、みんなでヨイショといった趣を感じます。
今回これを書くにあたって、一通りピアノでここら辺を弾いてみたのですが、無駄のない進行、3声のバランスの良さ、アクセントの緩急等、非常に勉強になる楽譜でした。せっかくなんでもう少し読み込んでいきたい。
では今回はこんな感じで。
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