これです。このBね。
ここで音色をガラッと変えたい。これが難しい。
いや、もっと正確に言えばその前の32分のFisからかもしれんが。
この場面、3小節前の12小節目から17小節目のffまである、息の長いクレッシェンドの中で
一応Fl. Ob.の木管とHr.が呼応しあう形で進行していくのだが、
この14小節目のBの音でHr.が周りを出し抜きたいんですよ。Hr.が立ち上がりたいんですよ(※立たない)音量的にじゃなくて、音色的に。
なんとご丁寧に楽譜にmarc.とまで書いてあるじゃないですか。しかもこれはHr.にだけなんだな、はっはっはっ!
で、これをやってくださっている録音がなかなかない、、、
1小節後のB→Hの進行は見せてくれるところは多いんだけれども。
まあ1小節後に関しては既にfだし、進行が進行なので分かりやすく鳴らしていただけるのだが、、、
強いて言うなら、チェリビダッケ×ミュンヘンフィルのリハーサル記録映像でのホルンの立ち上がり方(立たない)が個人的には一番好みです。さすがチェリビダッケ先生!禅を極めただけのことはありますな!!
さて、せっかくなので、和音も見ていきます。
調号的にはE-durですが、曲全体を通して調は揺れ動いていますんで、あまり参考になりません。
ここはH-durに向かうカデンツ中であるから、以下主調はH-durとして考えます。
結論から言うと、この小節では、一時的に長三度転調をし、響きに変化が加えられています。
そしてその進行にとってHr.のAis(=B)の音はなくてはならない存在なのです。
この場面の和音の進行としてはこんな感じですかね。
少しずつ響きは変えているものの、17小節目のV11までひたすらドミナントが続いているという、流れとしては比較的シンプル。
イレギュラーなのは15小節目、それまでのV71から突然長3度上の和音のV7に飛んでいることです。
それに伴って、トレモロをしている弦や対話をしていた木管とHr.が全体的に音域が上昇し、緊張感を高めております。ご苦労様です。
そもそも16小節目はV91で、普通に主調のドミナントの一種なので、乱暴に作ろうとしてしまえば、15小節目も別に前からの和音であるV71を続けていてもいいわけなのですよ。それでも和音進行的には一応問題ない。一応ね。まあさすがにそのままだとバランスが悪いからV72とかにはしそうですが。
でもそこで、あえて長三度上の和音を一時的に持ってくることで、響きに変化を与えている、ということですな、、、
そしてこの和声の変化を最も耳につく形で提示できるのが、何を隠そうHr.のAis(=B)なのです。いわば旗振り役なのですな。だからここは確実に仕留めたいところとなるわけです。Hr.吹きとしてワクワクしませんかね?(多分実際に乗ってたらワクワクよりも重圧のほうが大きくて嫌になる)
ちなみに、16小節目の和音は、H-durへ向かうカデンツとしてとらえればV91なのだが、3度上のDis-durの和音してとらえたらII7と考えることができてしまうので、実はこのカデンツはDis-durのI2とV7を介してDis-durに落とすこともできるという、まあ不思議な感じですね。シューベルトならこっちでやりそう。
はい、では今回はこんな感じで。
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